■暑中


つい1週間ほど前までは、ニュースのお天気キャスターも

「今年は冷夏になるでしょう」

なんて笑っていたのに。



「あーづーーいーー」

左の片手だけで伸びをして、空調のリモコンでスイッチを入れると、背中から

「猛暑だからな」

と呑気な声が帰ってきた。

「マコ兄はさ、どうせクーラー効いた美容院でシゴトだから良いよな。
あー、明日登校日なのに、行くのめんどくせー!」

そう言って頭で後ろにもたれかかると、さらさらと心地良く髪の毛が流れた。

「学校着いちゃえばクーラーあるだろ?
俺も高1の時酷い猛暑だったけど、俺の学校にはクーラーも無かった。」

読んでる雑誌から視線を離さずに、返事を返してきた。

「…マコ兄。」

「何?」

「手、暑いんだけど。離してくんない。」

「そのうちクーラー効いてくるし、良いじゃん。」

「そういうんじゃなくて、暑苦しいって言ってんの。」

「だめ。休みの日くらい、兄ちゃんにサービスしなさい。
明日、学校の後買い物行くんだろ?」

「っ…ちっきしょ…。」

言いかけた言葉をぐっと飲み込んだ。
明日は欲しい物全部買わせてやる。


なんてね。

2003.8.10

2003年の暑中見舞いページにこっそりリンクを貼って
展示していたマコサイ小説。
(発掘&再アップ:2004.7.29)