「この小さな手を今守ってやれるのは自分しかいない、と思ったら、 何でも我慢できる気がした」
空と翔の出会いは、空が中1か中2、翔はその2つ下で小5か小6。
空が土手で天体観測をしてたところに、ボールを探しながら迷子になった翔が、泣きながらやって来る。 空は翔に声をかけるけど翔は泣くばっかりで話にならない。空は翔に星を見せてやって落ち着かせて、やっと話を聞いたら隣の家の子だった。 送っていく途中、なかなか家に着かず不安混じりの表情をする翔を見て空は手を繋いでやろうとするが、空は他人との距離を縮めるのが苦手で、その手を引っ込めてしまう。一方望遠鏡で星を見せて貰って、「オリオン座」という星座も教えて貰った翔はすっかり空に打ち解け、安堵感で翔の方から空の手を強く握る。 一度引っ込めた手を翔から握られた空は、空の手を無意識に一生懸命握って離れまいとする翔に「僕が守ってやらなきゃいけない」という義務感を感じる。 翔の家に着くと、翔の母親が安心した表情で出迎えた。翔の母親は明るい人で、「遅くなっても怒られないなら、家でご飯を食べていらっしゃい」と夕飯に誘う。 一度は断るものの、翔の「オレのハンバーグ、空にあげるよ!」と嬉しそうに言う翔の顔を見て断れなかった。そこから、翔と翔の母親との交流が始まる。
空は、父親を亡くした後母親が再婚して新しい父親が出来たけれど、新しい父親は愛想の無い空を気に入らず、冷たく当たる。理由もなく殴られることもあった。母親は、前の夫を亡くしていることで新しい夫に嫌われたくない気持ちが強く、あまり空を庇わなくなる。 空は、もとは天体観測なんて興味が無かったけど、夜家にいるのが億劫で、外に出かけるようになる。父親も母親も何も言わない。 けど、お金もないし、行く場所も無いので土手で寝ころんで何となく星を見てたら興味を持つようになる。持ち前の頭の良さで、すぐ星座も覚えて宇宙のことを勉強するようになる。望遠鏡だけはどうしても欲しくて、やっとの思いで誕生日にプレゼントで欲しい、と言って、買って貰ったもの。
翔の母親はバイタリティあふれる人で、そんな隣家の様子に何となく気づいていて、できれば何とかしたいと思っていた。 そんな折りに、迷子になって心配していた自分の息子を空が連れ帰ってきたので、思い切って夕食に誘う。頭の良さそうな礼儀正しい子で、翔も空のことを気に入ったみたいなので、翔が「空と星を見に行きたい」と言えば、小学生にしては異例の23時門限で外に出してくれた。
空は、翔の家に自分の居場所があるように感じ始め、翔を弟のように、翔の母を憧れの母親像として見るようになる。
そのうち、翔の母親が空の母親にコンタクトを取るようになる。 翔の母親の快活さも手伝って二人は次第に仲良くなる。翔にいっぱいの愛情を注ぐ翔の母親を見て、空の母親も息子に対しての愛情を思い出し、夫との離婚を決意、実家の清里に空を連れて帰ることに決める。
空は、翔に対する漠然とした兄弟愛みたいなものに自覚はあって、翔と離れても、いつかもし再会できる機会があったら、星の話をたくさんしてやれたら、という思いを抱く。星の勉強を続けて、いつしか星そのものが空の生き甲斐になる。
大学は、片親だから奨学金のあるところが良いと、ランクを少し下げて入試点5位以内入学での学費免除を狙っていた。 翔のいる町の大学は少しレベルが高く、入学には問題ないけど学費免除は難しそうだった。記念受験だけ、と受けてみたら、首位合格してしまった。
というのが、「天体観測」という本の裏話というか、補完でした。 いつかこの話を漫画にしたいなーと思ってたけど、ここに書いたらすっきりしてしまった。
空の初恋は翔の母親かも知れないなあと思ったけど、翔以外に恋愛感情を抱く空を想像したら胸が痛くなったので奥底にしまっておこう。 私はなぜか、空に関して、自分の地雷展開をよく考えてしまう。 |